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特別講演会

特別講演会

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2020年1月26日(日)に「旧石器時代の丸木舟製作と航海の記録−木の伐採と加工にかかる石器製作と使用痕跡の研究−」と題する特別講演会がありました。2019年7月、台湾の東海岸を出航してから約45時間後、全長7.5メートルの丸木舟が黒潮を越えて約200キロ離れた与那国島の砂浜に到着しました。3万年前に大陸から日本列島に海を越えて渡ってきた旧石器人の航海再現するためという目的がありました。この 国立科学博物館の「3万年前の航海徹底再 現プロジェクト」で丸木舟の製作に必要な石斧の製作、立木の伐採、丸木舟の製作にあたられた首都大学東京の山田昌久先生から多くの画像と映像をもとにお話をうかがいました。

日本の後期旧石器時代前半期といわれる時代には刃の部分を磨いた局部磨製石斧が相当数出土していることが知られていますが、この石器が果たして何に使われたのかまだ確定はしていませんが、使用痕研究の成果から木の加工に使われたことは確実とのことです。刃の部分を磨製加工して作った石斧が確認されている地は、日本とオーストラリアだけですが、現段階で大陸になかったとは言い切れないとのことでした。日本ではこれまでに900点ほどの局部磨製石斧が出土しているが、河原で打ち割った大型剥片を素材としているため、刃は厚くないのが特徴で、中国や台湾の新石器時代や日本の弥生時代の石斧に比べれば確かに薄いのだが、縄文時代の石斧に比べた場合、長さ14 cmほど石斧の厚みは決して薄くはない。丸木舟用のスギの大径木の伐採実験は、当初は所属する大学の研究として始まり、実験では以前から別の施設を作るために探していた石川県の直径1m程のスギを伐採したということで、 2017年の9月に6日間かけて伐採が行われ、結果的に36000回近く斧を打ち続けて、伐り倒すことができたということでした。ただ、石斧は折れやすく、最高に長持ちした復元品で5000回ほどの打撃に耐えるものだったということでした。

つぎに木舟に仕上げる刳り抜き作業は東京のキャンパスで行われ、長い柄を持つ横刃斧と縦刃斧での粗削り作業だったということですが、延べ20日の作業で、丸木舟の形がほぼ出来上がったということでした。伐採時には縦刃の斧が作業姿勢に無理がなかったので活躍したが、刳り披き作業でも、縦刃の斧は使用できたとのことですが、内側の刳り抜き作業の湾曲面を作り出す際には横刃にした斧が活躍し、柄の長さが短い斧が必要だったということでした。そして、短い石斧は、伐採時に使用した斧よりも柄が太い方が、握りが安定して、作業がし易かったということでした。

2018年9月28日には、千葉県南端部の東京海洋大学の実験フィールドに移送して、海に浮かべて航行しては微調整をする段階に入ったということで、舟体を薄くしバランスを確認しながら舟底部で5 cmほど側縁部では3 cmほどの厚さに仕上げ最終的には火で焦がしてささくれをとったということでした。その後、航海実験出発地の台湾鳥石鼻に移送され、2019年5月26目から最後の調整加工や漕ぎ手の座席を設定し、丸木舟の前後に波除をつけ、さらに、5~6名の漕ぎ手によっ移動することができる重量にすることも考慮され、水分を含む割合で舟の重さは変化するが、350 kgを切るまでに軽量化されたということでした。

さて、このように仕上げられた丸木舟は2019年7月7日正午に台湾南東部の台東長浜郷の烏石鼻港を出発し。5人の漕ぎ手が交代せずに全航路を漕ぎ9日午前11時過ぎに日本の沖縄県与那国島に到着した。これは、旧石器時代の人類が黒潮を越える能力を持っていたことを間接的に証明するものとされました。しかし、黒潮を横切るという航海には成功したものの、つぎのような課題が残されたということです。

実際に復元品を作って伐採や丸木舟の刳り抜き製作を行ってみると、因定強度が安定できずに、石斧刃石器が折れたり、刃がかけたりすることが頻繁に起こったが、日程の決まっている航行実験に合わせて丸木舟は作らなければならなかったため、途中から伐採から刳り抜きまでの作業の中心となった雨宮さんの考えた丸木舟の加工に即した石斧を使って、加工作業をすることを選択せざるを得なかったこと。このため、実験に使っている石斧は後期旧石器時代の斧でないという声が、インターネット上で広まったことは真摯に受け止めなければならないこと。後期旧石器時代の石斧とその柄の復元研究は、まだ完成してはいないが、現在も海部先生を代表者とする研究活動で、根気強くその研究は継続されており、固定部分がうまく復元でれば、刃先は十分に木材の加工が可能な強度は持っているので、柄の長さと太さを変えて、固定構造を修正していけば、後期旧石器時代の石斧の実態にたどり着けることだろうと締めくくられました。また、今回の丸木舟製作実験には伐採に6日間、刳り抜きに20日間を要していますが、動物を追い求めて遊動生活をしていた後期旧石器時代前半期に1ヶ所にこれだけの期間逗留し得たかどうか、当時の生活状況の中でこれだけの余剰時間が取れたのかという問題もあると思いますが、今後の研究の進展に期待すると同時に、旧石器時代の斧の製作に成功の暁には、再びお話をうかがいたいと思います。

山田先生の講演の様子

会場の様子

 

 

 

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